松澤秀邦さん/文子さん「理想の暮らしかたへ整えていく」

2024.12.23

出水市高尾野の住宅地の中に紛れ、ひっそりと佇む人気のパン屋【Humme】を営むのは、神奈川県横須賀市から東京の大学へ進学した松澤秀邦さんと、鹿児島県出水市から同じく東京の大学へ進学した文子さんご夫婦です。当時東京での生活を送っていたお二人。秀邦さんはIT系の企業に就職し、文子さんも興味のあった雑貨屋・家具屋などの仕事に就きます。しかし30歳という節目を迎えるにあたって、二人は共通の疑問を抱くようになったといいます。【Humme】を始めることになったこれまでの事、そしてこれからのことをお伺いしました。

 

不満はない。でもそれで満足なのか。

<秀邦>
「東京の情報系の大学を出て、IT系の企業に就職しました。好きでその道に進んだものの、働く中でこのままこの会社や業界、仕事を続けていくことに疑問を抱くようになりました。不満はないけれど、数年後、数十年後を想像したときに、それで満足なのかなと。 30歳という節目を迎えた時、どういう生き方をしたいのか、どういう暮らしをしたいのか、どこでどのように暮らしたいのか。そういうことを妻と話すようになり、その結果、好きだった「食」を仕事に、その時に興味があった「パン」を軸にすることができれば、暮らしたい暮らしができるのではと考え、パン屋に転職しました。」

<文子>
「私は大学で出水を出て、そのまま東京で就職しました。雑貨屋、家具屋など、興味のある分野で仕事をしながら暮らしていましたが、これからどう生きていきたいかを考えるようになり、いつか出水に帰りたい、家族と近い場所で暮らしたいと改めて考えるようになりました。出水は仕事の選択肢が少ないことが懸念で悩んでいましたが、いっそどこでも生きていけるよう、自分たちで仕事を作ることができればいいのではと思うようになり、食を軸にしようと、私はカフェで、夫はパン屋で働き始めました。」

当時二人で話し合い「どういう暮らしをしたいのか」を考えた結果、それまでの環境から一旦離れ、全く違う環境に身を置き一からの経験を積むことになります。その内に文子さんのご出身である出水市に移住を決め、現在のパン屋【Humme】を始めることへと繋がります。

ただ当時は、パン屋さん一本で生きていくという強い決意というよりも、あくまで「暮らしかた」を優先した決断であり、出水に移り住んでからも秀邦さんは前職の会社からリモートで出来る仕事を請けたり、文子さんは妹さんとのアパレルブランド【FUSA】を立ち上げます。

生き生きと働く姿、その空気を浴びたい

「仕事」を中心にした生き方ではなく「暮らしかた」を中心にした生き方を選択したお二人。なぜそれほど「暮らしかた」に興味を持つようになったのでしょうか?

<文子>
「私たちが素敵だなと思うお店がいくつかあるんですが、みなさん生き生きと働きながらご自分たちの手でそのお店の空間を作っています。そういった方々の仲間に私たちもなりたいし、その空気や雰囲気を浴びたい。例えば、これはどうやったらもっと美味しくなるかなとか、どうやってお客さんがもっと良い気持ちになってくれるかなとか。そういうことを考えながら、ワクワクできる仕事を作ってる感覚を持てる、というのが、私たちが考える暮らしの中ではとても大切だと思っています。」

<秀邦>
「二人とも企業に就職して勤めの経験もあるんですが、そこには当然既存のルールがある。もちろんルールは大切ですし、良い面もたくさんあるんですが、今の私たちにはルール自体を自分たちで作って暮らしていく。その方が世界がどんどん広がっていく気がしてします。」

Humme以外のこと

<秀邦>
「転職した頃、パン屋ではこれまでの経験はほぼ役に立たないだろう、一からまた頑張らないとと思っていましたが、実際は働く姿勢はもちろんのこと、パソコンの技術や知識を活かせる場面が何度もありました。パンを作る、という意味ではど素人なので一からでしたが。それをきっかけに、一つのことを極めるのも凄いけれど、様々な経験や知識を糧にして、色々やってみるのもアリなのだと思うようになりました。実際出水で暮らしてみると、仕事を複数掛け持ちしていたり、閑散期には違う仕事をしたり、何でもできる人がいたりと、色んなことをしている人が多いことを知り、そうやって暮らしていくことに抵抗がなくなりました。Humme を始めてからしばらくは、私自身も以前の会社でリモートで働きながらお店をしていましたし、会社を辞めてからも個人でWebページの作成などをできる範囲でしています。最近はお店が忙しくなってきたことや、やりたい方向性もあって Humme のことをほぼほぼしています。」

<文子>
「洋服は母が服が好きだった影響からか、私も妹も小さい頃から好きで、東京で妹と暮らすようになってからは、よく二人で服を見に出かけていました。妹は服飾の専門学校を出て、そのままアパレル業界に就職し、服に関わる仕事をしていました。その中で業界に対し思うこともあったのと、私と買い物を行く中で、こんなにも服があるのに欲しい服がないというのをよく話していたのもあり、二人でアパレルブランドを立ち上げることにしました。妹がデザインや工場とのやりとりをして作り、私はデザインの意見を出したり、販売や広告をメインにしています。」

これからの暮らしかた

少しずつ理想とする暮らしを作ってこられたお二人。これからのことをお伺いしました。

<秀邦>
「ここで暮らす人たちが健全な暮らしを送るための仕組みをつくりたいです。そのために衣食住を通して、人とモノと時間を繋ぐ存在になることをHummeでも個人でも目指しています。例えば「パンとお菓子」でいえば、もっと近隣地域の食材を積極的にたくさん使用し、それを地域の方に届けると共に、地域外の方にも届けられるようになりたい。たくさん届けられる、作れるということは、食材をそれだけたくさん使用できるということ。それは微力ではあれど生産者の方の支えややりがいにも繋がるかもしれないし、パンやお菓子を通して食材のことや、地域のことを知ってもらう、手に取ってもらえるきっかけになるかもしれない。それを届けるために従業員を雇用することができれば、ここで暮らそうと思うきっかけになるかもしれない。行ってみたいと思ってもらえれば、Humme だけでなく他店を訪れることにもなったり、地域のためになるかもしれない。今はHummeはパン屋であり「食」のお店でしかありませんが、これまで経験してきたことを軸に衣食住に関わるような、地域の循環の一端を担うような、そんなお店や行動をしていきたいです。」

<文子>
「自分の暮らしを整えることはもちろんですが、人の家を見たり、暮らし方に興味がずっとありました。いかに気持ちよく生活していくか、工夫するか、そういうことを見たり考えたりすることが昔から好きでした。関わってきた仕事を振り返ると、図らずも衣食住の全てに関わっていて自分でも驚きます。これからも暮らし方を整えながら、衣食住に関わっていけるお店づくりをしていきたいです。」

現在Hummeは、出水市六月田町に2店舗目を出店準備中。高尾野での営業は心地よいので今後も続けていく予定ではあるものの、より多くの方に日常的に利用していただけるお店へと成長するために新店舗を出すことを決めたそう(2025年オープン予定)。それに伴って現在一緒に働く仲間を募集中。様々な仕事をご経験され「暮らしかた」を大切にしているお二人だからこそ「食が好きな方や何事にも楽しみを見つけられる方、創意工夫していける方」との出会いを待っています。

<文子>
「パン屋さんは全国どこにでもありながら、コンビニやスーパーとは違った地元の雰囲気が出るもの。私たちのHummeもそういう存在でありたい。新しいお店ではスタッフの方を雇用したいと思っています。これは私たちにとって大きなチャレンジですが、パン屋さんは比較的働きやすいと思うので、Lifenseを利用される方の中で興味がある方がいらっしゃったらぜひ一度いらして欲しいです。」

出水そしてLifenseについて

—–出水はどんなところですか?

ちょうど良い田舎、でしょうか。田舎だけど暮らしが不便になるほど何もないわけでもない。買い物できる場所や思い思いに過ごせるカフェなどは少ないですが、自分で楽しみを見つけて暮らすには良い場所と感じます。例えば庭の手入れやDIYをするならホームセンターもいくつかありますし、ちょっとこだわった道具などを置いたお店もあります。自然のアクティビティも海も川も山もあり、お隣の阿久根では安全に楽しめるところも。買い物を楽しみたい時は鹿児島市内や福岡にも新幹線に乗れば意外にすぐです。あとは、豊かな自然が近くにあり、美しいと感じる風景が多い場所です。寒い冬の澄んだ空気で見る山陵、春に木々が芽吹いて様々な色の緑が重なり合う山々、夏の暑い日にも涼しさと爽快感をくれる川、清々しいほどの広い空と海と、見れてよかったと何度でも思う夕陽。水が張られ稲を植える前の田んぼも。ずっと暮らしていると当たり前に感じる何でもない風景ですが、これらは出水に帰省したときに感じていた風景です。今もわざわざ見に行かずとも、車を運転しているとふとしたときに向こうから唐突にやってきます。出水はそんな場所だと思います。

—–出水市あるいは北薩のおすすめスポットは?

ともまち珈琲
ロケーションが最高で、そこで飲む珈琲が好きです。週一で販売しているカレーが絶品。お店の方もとても気さくで色々話してしまいます。ともまち珈琲で出会って繋いでいただいたご縁も多々。

SANPOH
高尾野にある造園を専門にされているお店です。造園の傍らでお店もされていて、店内には植物や道具など庭に関連するものがたくさん置いてあります。ペンキも販売しているのですが、販売だけでなく持ち込んだ家具のペイントも一緒にできたりして楽しいお店です。店内もすごく素敵でずっと見ていられます。

otte
不定期で営業している惣菜屋さんです。お昼にお弁当や、惣菜も単品で購入できるので、ちょっとおかずが欲しいときに重宝しています。味はしっかり目で、ご飯が進む感じです。

うみまちテーブル
不定期で阿久根を中心にキッチンカーでお弁当を販売されています。やさしい味で、食材の使い方や味付けがすごく勉強になります。ともまち珈琲でよく販売しているので、毎度の楽しみにしています。

菜食菓子店ローズマリー
ヴィーガンのお菓子を中心に販売されています。今はお休みしていますが、お菓子は噛むほどに美味しく、食べていて心地よいです。丁寧に作られているのがお菓子からも人柄からも伝わってきます。

—–読者の方に一言お願いします。

私たちは「暮らし」を考えることがとても大切だと感じていますし、好きです。自分が数年後、数十年後にどこでどういう暮らしをしていたいのか、それを日々、とはいかずとも、節目節目で考えていくことが、今の時代を生きていくうえで大切なことなのかなと思います。それを見つけるには、様々な土地へ行き、その土地で暮らしたり、その土地で暮らす人に関わることが近道なのではないでしょうか。
私自身は様々な土地で暮らすことはできていませんが、今まで過ごしてきた土地を離れ、出水で暮らすという経験をして、これまでの価値観が大きく変わったり、どう暮らしていきたいのかというのも、パン屋になろうと決めたときからも、どんどん変わっていっています。
住み慣れた土地を離れたり、新しいことを始めるのはかなりハードルが高いことですが、そのきっかけにLifenseはなるのではと、話を聞いた時に思いました。
ちょっと暮らしてみる。それができる。
自身が暮らしている土地から離れた土地で免許を取りつつ暮らしてみる。
そしていつか自分の車でその土地を訪ねる。
なんか、いいですよね。
そんな日が来ることを、ここで暮らしながらお待ちしております。

DATA
パンとお菓子 Humme
https://www.humme.jp/

humme<Instagram>
@humme.store

FUSA<Instagram>
@fusa.official

松澤 秀邦<Instagram>
@hidekuni.mw

松澤 文子<Instagram>
@fumiko32

写真:柏木 直紀
文章:松島 晋也

 

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