山川温子さん「アイアンマンじゃなくてスパイダーマン」

2025.10.10

「有名になるんじゃなく、地域に必要とされる存在でありたい」

そう語るのは、この夏ドラゴンゲートプロレスを出水市に初上陸させ、地域を盛り上げる一大プロジェクトの誘致を大成功させた山川さんです。東京から鹿児島県出水市へ移住し、本町商店街に<scAle>という場所を作り出し、デザイナー・イラストレーターとしてご活躍されています。都会の喧騒を離れ、自然豊かな「里の暮らし」にたどり着いた東京生まれ・東京育ちの彼女は、何を想い、これからどこへ向かうのでしょうか。少林寺拳法で東京都大会1位に輝いた過去、福祉の世界への転身、そしてスリランカを通じた運命的な出会い。それぞれの世界で揉まれながらも、しなやかに自分の道を切り拓いてきた山川さんのこれまでの歩みと、これからの展望を伺いました。

風変わりな学校と少林寺拳法の教え

東京で生まれた山川さん 。小学校時代は周りに馴染めず、いじめられた経験もあったと言います 。そんな彼女の転機となったのが、中学から入学した和光学園でした 。

「自分の言いたいこととか思ってることを表現することを、その学校で教えてもらいました。私なんて個性がないぐらい周りが超強力な個性の人たちばっかりだったので、和光学園での中高の6年間は、自分の人生にとって大きかったなと思います」

高校では少林寺拳法部に入部し、なんと東京都で1位になるという実力を発揮 。その成績から防衛省への道も開かれましたが 、家族がグラフィックデザイン関係者だったこともあり、自然とアートの道へ進むことを決意します 。

「丁寧に鍛錬し、自己と向き合うことが結果につながることを実感できました。やりたいことに集中して向き合う貴重な体験でした」

この経験は、後の彼女の仕事への向き合い方にも大きな影響を与えているのかもしれません。

雑貨店、福祉、そしてスリランカ。出水市移住のきっかけ

大学卒業後、エスニック衣料雑貨ブランド「MALAIKA」に就職 。もともとエスニックやオリエンタルな文化に惹かれていた山川さんにとって、その国が持つエネルギーを感じられる魅力的な仕事でした 。

しかし、職場の人間関係に悩み、精神的に限界を感じていた頃、偶然の再会が彼女を新たな道へと導きます 。自閉症やダウン症の方々が制作したものを製品化する特定非営利法人「LaMano」へ転職 。福祉の知識は全くありませんでしたが、彼らのユニークな個性に触れる毎日は、面白さに満ちていたと振り返ります 。

「彼らの個性に触れられたのは、人生の大きな経験でした。どうやったらこの人は楽しくアート活動をしたいと思ってくれるかな、という環境づくりから一緒に寄り添って考えるような日々でしたね」

そして2019年、人生を大きく動かす出来事が起こります。参加したスリランカツアーで、ありのままの自分に返る時間を過ごし心身がデトックスされる中で、「なぜ私はやらない理由ばかり作っていたんだろう」と我に返り、「もっと自分のやりたいことをやろう」と自身の創作活動を本格的に再開することを決意。これが、鹿児島県出水市への移住へと繋がる大きなきっかけとなりました 。

出水市で見つけた「里の暮らし」とデザインの役割

コロナ禍の2020年夏、地域おこし協力隊として出水市へ移住 。東京で千万人分の一人でいることに違和感を覚えていた山川さんにとって、人と人との繋がりを直に感じられる出水での生活は、かけがえのないものでした 。

「出水は『里の暮らし』なんです。生活に必要なものが揃っていながら、車で5分も走れば大自然の中に入れる 。空が広くて、酸素量が多い感じがします 。東京ではたくさんいる人を人間として認識しない(できない)ことで自分を保っていましたが、出水では人と目を合わせて挨拶できるゆとりと人間らしさがあります」

現在はデザイナーとして、名刺やチラシ、イラスト制作など幅広く活動 。商業デザインではクライアントの要望を最優先する一方、アートは自身の「精神安定剤」として、幸せな気持ちを込めて制作していると言います 。初めてデザインを発注するクライアントが多いため、密なコミュニケーションを大切にし、価格の内訳を丁寧に見える化することを心がけています 。

「初めてデザインを注文する方が多いので、「デザインを気軽に注文できる」という最初のハードルを下げたいという想いがある一方で、業界の適正価格を保つことの重要性も感じているため、内訳を明確にしてご提案するようにしています。『デザインで繋がる、その後も相談できる人』を目指しています。友達のような感じで、気軽に声をかけてもらえる存在でありたいです」

目指すは「アイアンマン」より「スパイダーマン」

インタビューの最後に、今後の目標を尋ねると、山川さんから印象的な言葉が返ってきました。

「必要としてもらえる人になりたいです。アイアンマンじゃなくて、スパイダーマンになりたい」

「アイアンマンは地球上の人間全員を守りたいけれど、スパイダーマンは『親愛なる隣人』なんです。すべての人を助けられなくてもいい。自分の手の届く範囲にいる人たちを守れるスーパーヒーローでありたい。それがきちんと仕事として生きていけるようになったらいいなと思います」

最後に、地域おこし協力隊を目指す人へのアドバイスを頂きました。「自分は何が得意で、何が好きで、どういう人間で、この町のどこが好きになったのか、今後何をしたいのか、そのために誰の力を借りたいのかをはっきり言える人が向いています。自分を表現するものを持っていることが大切です」

東京での多様な経験を経て、鹿児島県出水市という新たな場所で、人と深く関わりながら自分の役割を見つけ出した山川さん。彼女の「ご近所ヒーロー」としてのこれからの活躍が、ますます楽しみです。

出水そしてLifenseについて

—–出水はどんなところですか?

暮らしやすい!!

里の暮らしのすぐ側に自

然が寄り添い、

食べ物が美味しく、作り手の顔が見える距離感が嬉しい。

人が優しく、人間らしい丁寧な暮らしができることが贅沢だと感じている。

—–出水市あるいは北薩のおすすめスポットは?

・東雲の里

・米ノ津川沿いのジョギングロード

・飲食店(8キッチン・ダイニングめだか・ゴリラキッチン・耦祥庵・鶴飛来地など)

・阿久根(脇本海岸・ともまち珈琲・パズルアウトドア・海岸の景色など)

—–読者の方に一言お願いします。

『出水に暮らすことを選んで良かった!』と毎日感じています。全てのものが飽和するほど集まっている東京で生まれ、常に最新のものが身の回りにあることは便利だと思いましたが自分がそこにいる必要性は薄く、生き甲斐を感じられる瞬間は少なかったです。出水は、人口5万人ほど。やりたいことに挑戦する人、応援したい人、お互いに顔が見える距離感です。自分が自分である価値に気づかせてくれたのは、この距離感でした。出水を、鹿児島を愛する情熱的な人たちが、お互いに支え合って一緒に面白い暮らしを作ろうとしています。その一員になれることがすごく幸せです!『ひと』と出会い、交流することがその街を楽しむきっかけになると思います。出水の素敵な出会い、ぜひ体験しに来てください!

DATA

山川温子|scAle <Instagram>
@atsukoyamakawa_scale

写真:柏木 直紀
文章:松島 晋也

 

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