神奈川県横浜市ご出身の川村洋太さんが 昨年11月に出水麓武家屋敷群の中にオープンさせたのは自然派国産茶の専門店 茶ノ花です。出水市の地域おこし協力隊を経てここ出水市において自身の事業をスタートさせました。地元に住んでいる方も観光でやって来た方も訪れる新しいホットスポットです。川村さんが出水にやってくることになった経緯や新店を通じて伝えたいお茶の世界などを伺って来ました。
関西に渡り 出会ったお茶の世界
地元は横浜なんですが 大学進学を機に関西に出ることになりました。結局中退してしまうんですが、大阪の雰囲気が自分に合っていたのでそのまま職を探すことに。そうしてお世話になることになったのが、世界のお茶を専門的に扱うお店 LUPICIA –ルピシア– でした。
珈琲が体質に合わず、あまり嗜好飲料に触れてこなかったのですが、LUPICIA –ルピシア– でお茶の世界に触れたら面白いなと思えるようになって。店舗で接客していく中で自分のお店を持ちたいなと思うようになりました。それが今から10年くらい前だと思います。LUPICIA –ルピシア– で幅広くお茶のことを勉強できたのは本当に大きく、あの時の経験が今に繋がっています。ただ、生産側・現場側のことをもっと知りたいと思うようにもなっていって、LUPICIA –ルピシア– を退職した後に烏龍茶を勉強しに台湾に渡りました。
国内外での経験と地域おこし協力隊
台湾では日本人の方の家の部屋を間借りして茶藝館で3か月ほど働いていました。現地で高品質な茶を触れたり、休日は産地を観光したり、生産者の直販市場で購入した茶を勉強したり。とても有意義な時間を過ごしていましたが、茶藝館を退職し次の仕事を見つける段階でなかなか仕事が見つからず、稼ぎたいのにそれができない状況に悶々とする時間が続きました。ゆっくり考える中で、日本の茶農家さんの仕事がしたいと思い、半年の滞在を経て帰国。宮崎県の五ヶ瀬町で農家さんのところに住み込みでお茶の仕事をさせてもらっていました。その後、コロナによる経済市場の変化と自分の年齢を考えた時に、以前から考えていた「自分の店を持ちたい」という思いをそろそろ本腰入れて準備したいと思うようになり、当時出水市が募集していた地域おこし協力隊制度を活用させていただくことにしました。当時からお付き合いしていた現在の妻が出水出身ということもありますが、初めての土地で 暮らすだけでなく事業をスタートさせる上で 地域の課題に取り組んだり実際に市民の方々と知り合えたのは大きな財産です。そもそも色々な土地で生活するのは苦じゃないというか、慣れている方なのでその点の心配がなかったというのもありました。
弓道とお茶
実は学生時代ずっと弓道に打ち込んでいたのですが、今思えばお茶の世界にのめり込んだ感覚と似ているところがあると思います。中学生までサッカーをしていたんですが負けた原因を突き止められないことが多い。何がいけなかったのか自分なのか、仲間なのか、その部分が嫌いになっていって。高校でどうしようかと悩んでいた際に、恩師に弓道を勧められて始めました。
目標が明確で問題点が自分の中にあるというシンプルな突き詰め方が、弓道にもお茶にもあると思っていますし、性に合っていたんだと思います。
また弓道にもお茶にも 作法 という名のルールがありますが、私はあまり作法にはこだわっていません。決められた動作や作法よりもなぜそれをするのか、理由や根源を大事にするべきだと思っています。他のアプローチでも到達できるものであるならばそれも良い、と考えている方です。型にはめるのではなく意味を知って理解できているのであればもっと自由に楽しんで良い。
私がお茶の世界が好きになったように、型にハマらずに楽しむことができる、という点で弓道とお茶は似ているところがあるなぁと個人的に感じています。
型にハマらないことの大切さ
地域おこし協力隊として赴任してから、出水市の観光促進の部署に配属されました。これまでやって来たことは観光にまつわるものではなかったので初めの方は戸惑いました。観光ツアーの内容を考えたり、観光PRになるものを発掘したり、観光のプロではないのでお願いされるものに応えられずにいました。
そんな中で 2年目だったかな、当初から念頭にあった茶業での起業、これから先の定住を考えて茶ノ花という屋号でスタートさせました。自分も一事業者として活動を始めたら人との繋がりが増えていって。そうすると県外でのお茶の販売会などにも出るようになって。これは出水市のPRになっているんじゃないか、と気づきました。
型にハマらなくても、今までと違うアプローチでも自由に目標に向かうことができる、と自分自身で体現した瞬間でしたのでとても自信になったのを覚えています。自分の中の軸が一貫していればいつか実績にもなるし全ては繋がっていくんだなぁと感じています
嗜好品の楽しみ方をもっと自由に
お茶って嗜好品ですが知っていくと本当に面白いです。同じ見方でいうと、お酒も大好きです。焼酎とかウイスキーとか気になるものは買って家でチビチビ飲んでます。コーヒーが飲めないというのが大きいかもしれませんが、他の嗜好品もたくさんあることを知ると本当に楽しいです。お茶に関していうと、原料の茶葉は私たちの仕上げで香味がかわりますし、買われていったお茶が飲まれるとき、道具も淹れ方も人それぞれ。さらに飲む人の好みや体調も移り変わるので、全てが一定でない。そんな不安定な移り変わりが面白い部分だと思います。色んな楽しみ方ができるお茶の世界を私自身が知っているからこそ、私たちのお店「茶ノ花」が大事にしていることをより多くの方に伝えていける場所にしていきたい、と思っています。
お店は諏訪神社を参拝したご家族や武家屋敷を訪れた外国人観光客の方、地元の方、わざわざ茶ノ花に来てみたいと遠方から来られた方など多くの方に利用していただいていますが 、ゆくゆくは私の地元である神奈川にも分店を出したいと思っています。
家族の一つの風景のとして、家族が家でお茶を淹れてくれていて子供のころから飲んでいた、というのがあるとして、そういった経験をしている方は少なからずお茶の淹れ方も見様見真似で出来る。ただその経験すらない方も少なくない時代です。色々なところでお茶を楽しむ風景が増えいったらいいなと思っています。
出水そしてLifenseについて
—–出水はどんなところですか?
衣食住が豊か
—–出水市あるいは北薩のおすすめスポットは?
●マルチェロ
●KAI
●東雲の里(草の居)
●寺社仏閣
—–読者の方に一言お願いします。
起業して生活するのに適したところだと思います。
DATA
茶ノ花<Online store>
https://teaclubchanoka.stores.jp/
茶ノ花<Instagram>
@chanoka_teaclub
写真:柏木 直紀
文章:松島 晋也