橋本隆介さん「良いお魚とは何か」

2025.02.24

橋本水産株式会社は、100年以上水産業で地元に根ざす会社です。4代目として現在会社を率いているのは橋本隆介さん。水産業としてのルーツは曾祖母から始まっていますが、祖父の時代には中国での鉄工所経営を経ているなど、現在に至るまでには少し変わった系譜を継いできています。この日も忙しく注文の入ったお魚を捌きながらインタビューに応えて頂きました。日々の食事としての「お魚」はたまたビジネスとしての「お魚」など、「良いお魚とは何か」を大きなテーマに、色々な視点からこれまでの水産業そして事業展開の可能性について伺ってきました。

即入社ではなく、個人事業主としてスタート

橋本水産が法人化したのがちょうど私が生まれた時なので48年前になります。また水俣から出水に来たタイミングで、魚市場から魚を買うっていうことだけじゃなく冷凍庫業も始めたようです。

私自身は大学進学のタイミングで大阪に出て、経営学を専攻していました。同時に学生時代にはお魚の仲卸や料理屋さんでお魚のノウハウを教わりました。色々な経験を経て出水に戻ってくることになるのですが、帰ってきてそのまま橋本水産に入社したわけではなく、別会社の鮮魚部門で働くことで地域のことをまず学び始めました。地元のお魚はどこが美味しいのか?お客様に届くまでにどういう流れになっているのか?肌で感じることで、身内の会社ではわからない周辺のことを知れたのは、今思えば大きかったように思います。

その後、今度は個人事業主としてお魚の仕事を始めることになります。仕入れは橋本水産にお世話になりながら、食卓にお魚をどう届けるか?を考え事業化していきました。その状態がしばらく続いたある日、橋本水産から帳簿を見て欲しいという機会があって。もしかするとこれまで勉強してきたことが活かせるかも知れない、と思い見させてもらいました。自分なりに改善が必要かも?と思える点を指摘しましたが当時の私にできるのはそこまで。何の影響力もない。そこから先にもう一歩踏み込むためにはどうしたら良いか?を考え始めた時期です。

最終的には、当時橋本水産の取引先にもなっていた、私が個人事業主として立ち上げた事業を伸ばし大きくすることでサポートさせていただく方法を採用し、その後入社して現在に至る、といった経緯です。

瀬崎祐介さんとの出会い

自社の経営では自分自身の経験を元に判断してきたことが大きいのですが、それとはまた違ったお魚の視点を与えてくれたという意味で、枕崎で本枯節を作っている金七商店の四代目 瀬崎祐介さんと出会った影響が大きいです。例えば、売価がいくらで取引先がこれくらいで、といった計算式だけで成り立つビジネスではなく、全く違う世界を見せてもらった人です。ものを売るんじゃなく、まず自分がやりたいことから発想する。やりたいことを突き詰めた先で出会ったお客様とお取引をする。そうすると、実は高い評価を受けているレストランだったりする。そういう世界や考え方を瀬崎さんに見せて頂いた時に「良い魚屋さんって一体何だろうか?」という原点に戻ることができました。

たくさんお魚を持っている、ということではなくて、お魚が欲しいという人にちゃんと届ける、食に対して探求している人を喜ばせる提案ができる。やってきたことは変わらなくても、それに気づけたことで細かな気配りや丁寧な対応が出来、結果近年では新しいお客様や取引先と出会えていると思っています。

ええ顔で喋れる人

魚の品質管理、配送方法の改善、などはお魚を取り扱う会社としてずっと続いている命題ですが、水産会社としては人材採用も重要なポイントだと考えています。抽象的な表現になりますが「ええ顔で喋れる人」って良いなぁと思っています。その言葉の意図としては、お客様とのコミュニケーション能力の重視や、従業員同士との対話の重要性が挙げられます。配送する際の魚の捌き方や梱包の仕方など、届いた先のことをどう想像するか?によってお魚の処理の方法は変わってくる。

今の若い方はとっても器用で一通りなんでも出来る方が多い。一方で、前述しているようなことへの配慮が欠けている方もいる。仕事は仕事として継続して取り組み、その部分を磨き上げていくことで本当の意味でお客様に喜ばれるものになっていくのではないか、と考えています。どの仕事でもかじっただけではわからない奥深さがあるものです。その部分を掘り上げていけるような方との出会いがあると嬉しいですね。

日本のお魚

自分自身が動くことで新しい領域を開拓してきたところはあるんですが、一方で早く会社を自走できる状態にして次のステップに行きたい、と考えています。そのためにはもっと経営を安定させて、強い組織を作らなくては、と思っています。当社は色々な部署がありますがそれぞれの部署で利益を確保していく方法や、連携する仕組みにも取り組みたいです。そして、次のステップと考えているのは海外です。

日本食や日本のお魚が海外で評価され、今も尚その風潮は続いています。おかげさまで流通や技術の革新によって今までより美味しい状態でお魚を届けることが可能になってきました。ただし、お届けした先の現地でのお刺身の取り扱い方は、正直まだまだ不十分なところもたくさんある。現地の方にもより美味しい状態で刺身を提供する方法を伝えることができれば、これまでお刺身に縁遠かった国にもお魚を食べることが定着したり、新しい食文化が創出されるのではないかと考えています。お寿司屋さんは世界中にどんどん出来るけど、そこにお魚を届ける中継ぎ役としてのお魚屋さんのクオリティがイマイチでは、せっかく素晴らしい日本の食文化が正しく伝わらない、と思うんです。そういう意味で海外でのお魚屋さん展開は可能性があって面白そうだな、と考えています。今まで身につけたお魚の知識をもっと広めたい!試したい!と思っているので、これからもどんどん色んな人と会って、色んな世界に飛び込んでみたいですね。

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DATA

橋本 隆介<Instagram>
@longkai_h

写真:柏木 直紀
文章:松島 晋也

 

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